とても面白い玩具を見つけた。面白くてくだらない戯言を口にする、という女だ。 特別華やかであったり、人を惹きつけるような魅力があるわけでもない。しかし可愛らしさというものは少しある。その控えめな可愛らしさが、こうして作法委員会の中にいるのに丁度いい具合なのだ。 美しいものを集めた委員会だから、その中に更に美しいものが加わってもつまらない。地味な中にあるこの可愛らしさこそが程良いのだ。 みなもいい具合に彼女になついているようだし、このまま可愛らしくその場に座っていればいいというのに。そうすれば私がずっと愛でてやらんこともない。 「さん、この簪も似合うと思いますよ」 「わ、高そう……つけていいの?」 「勿論ですよ。ほら、じっとしてください」 煌びやかなものだけで飾り付け、女を引き立たせるなんてことは三流の者がすることだ。彼女の可愛らしさは、それだけでは引き立つどころか見えなくなってしまう。 落ち着いた瑠璃紺の着物を身につけた彼女は、藤内の施した化粧で可愛らしさがほんの少し増している。終始恥ずかしげに頬を染めるそれは、少し出すぎてしまった可愛らしさだ。 地味な装飾ばかりではつまらないと、私は喜八郎が結いまとめた髪に簪をつける。高そう、と目利きがない彼女でもそう思う程に華やかな簪は、それまで地味だった姿に華を添えている。完璧だ。 「ほら、出来ましたよ」 「わあ! さん、とっても綺麗です!」 「ほ、ほんと? 簪に負けてない?」 「何を気にしているんですか。私が仕立てたんですよ。丁度いいくらいに簪が貴女を引き立てている」 「先輩だけが仕立てたんじゃないですよー。私だって髪を結ったんですよ」 「喜八郎、それを言うなら藤内も化粧をしただろう。自分だけをたてるな」 ぐちぐちと文句をつける喜八郎を横目に、兵太夫と伝七と鏡を見て嬉しそうにする彼女に目をやる。 やはり大人しく、私たちに仕立て上げられるだけの存在でいればいいのに。作法室の中だけで生きる、寧ろ私だけに愛でられるものであればいい。 だって貴女は、玩具であることではじめて必要とされるものなのだから。 壊れるまで一緒にいよう 可愛らしくて、誰にでも優しい、みんなが大好きなさん。 だからどうか、裏の顔など見せないで。(侵入者なぞどうでもいい、彼女が玩具であればそれでいい) |