今、忍術学園でお手伝いさんをしているおねえさん。
さんは、私たちが学園長先生から頼まれたお使いの帰り道で会った人。とつぜん空から落ちてきたさんにはおどろいたけれど、一番びっくりしているのはさんだった。
けがをしていたから、保健委員長の善法寺伊作先輩にみてもらって、それからずっと忍術学園でくらしている。
なんとさんは、忍者のいない“いせかい”からきた人らしい。せかいってなんだろう、ときり丸やしんべヱに聞いてみたけど分からなかった。でも、ふしぎな装束や、とてもきれいな手をしているから、どこかの村からきた人ではないことは分かった。
それに、ぼくたちと一緒に食堂のおばちゃんのお手伝いをしたとき、さんは飯釜を見て「これなに?」と聞いてきたんだから。
ご飯を食べるのにひつような飯釜をしらないなんて、ぜったいにおかしい! だから私たちはそれを聞いて、さんはほんとうに“いせかい”からきたんだと思ったんだ。
他の先輩たちは、さんのことをあやしいと思っている人もいるみたい。でもさんと一緒にいると、ぜったいにあやしい人じゃないって分かる。だって今もこうして、私と手をつないでくれて、目があうと笑ってくれる。とてもすてきで、やさしいお姉さんなんだから。

「乱太郎くん、どうしたの?」
「あっ、いえ、なんでもないです! 楽しいなあって思ってただけです」
「歩いているだけなのに?」
「はい! 私、さんといっしょにいるのが楽しいんです」
「……ありがとう、乱太郎くん。私もとっても楽しいよ」

そう言って笑うさんは、またにぎっている手をぎゅうっとしてくれた。あたたかい手は、なんだか母ちゃんみたいに優しかった。
“いせかい”から来た人とか、あやしい人と言われていても、そんなの関係ない。私はさんが大好きで、それはぜったいにぜったいに変わらないことなんだから!

「乱太郎くんて本当にかわいい」

聞こえてきた声に、私はまたえがおになった。



この手に武器などありません


だいすきだいすきお姉さん! それを知らない先輩たちは、ちょっとかわいそう。